温泉地で散歩をする理由
(内田脳神経外科理事長 内田泰史)
昔の日本人に”湯治暦”があり、定期的に湯治場へ行って、自然治癒力を高めていました。
”骨休み”と言い、温泉浴によって自然治癒力を高め、病を克服し、また、積極的に体温を上げ、予防医学に励む人が多かったのです。
”自然治癒力”とは、「人間がもともともっている『自分自身を治そうとする力』」「体内の秩序が乱れたときに、自ら秩序をつくり出し、元の状態に戻ろうとする能力」のことです。
”湯治”では、お湯につかるだけでなく、体のために大切なことがあります。
それは”散歩(ウォーキング)”です。
温泉に行けば周辺の山や川や海などの景色を楽しみながら散策する人が多くみられます。
このことには本来、積極的な保養上の意味があります。
適度な運動をすることで、下半身の筋肉に熱をもち、温泉に入ることで高まった体温を維持することができるという効果です。
全身の筋肉の約70%は腰から下にあるのです。
気をつけたいのは、温泉は湯につかるだけでも相当な体力を使います。
長旅をして到着後すぐに風呂へということは避けたいものです。
部屋でお茶を飲んだりしてしばし体を休めてから、おもむろに湯につかる。
これが保養の場としての温泉との正しい向き合い方です。