土佐遊湯連応援メッセージ 井門隆夫
(井門観光研究所 代表取締役 井門隆夫)
高知県の方々には失礼な話だが、私の周囲には「47都道府県で最後に訪れたのが高知県」という方が少なくない。
それだけ、観光地のイメージがないのだと思うが、温泉になるとなおさら。
「高知県に温泉があるの!?」という反応がまだまだ主流だ。
ところが、高知には、数々の温泉が県内各地でわいている。
道後のように温泉街にならないからこそ守られた、知る人ぞ知る一軒宿が多いのが特徴で、泉質も、硫黄泉あり、塩化物泉あり、炭酸水素塩泉ありと実に豊富だ。
こうした温泉を、以前から満喫している方々もいる。
それは、四国霊場八十八ヶ所をめぐるお遍路さん。
疲れた体を温泉で癒し、また次の札所に向かって歩き続ける。
日本の温泉の歴史は古く、古代からわいていることが知られているが、江戸時代には「湯治文化」として温泉宿が栄えた。
寒冷化した日本で農作物が不作となったこともあり、人々は温泉に逗留して療養したのである。
その際、温泉へは歩いて通ったことを考えると、お遍路さんとの共通点を強く感じる。
当時、歩いて温泉に通う人々にとっては、温泉と温泉を巡り歩く「渡り湯治」が当たり前だった。
例えば、草津温泉のような殺菌力のある酸性湯で湯治した後は、柔らかな沢渡温泉のアルカリ泉で肌を修整し、最後は伊香保温泉の塩化物泉で保湿する、というように泉質をも考慮して、歩いて温泉を巡ったのだ。
この「渡り湯治」が(お遍路さんにより)現代でも行われているのが、高知県である。
すなわち、お遍路さんの温泉めぐりは、さながら「渡り湯治」そのものなのだ。
土佐遊湯連に加盟する高知県内の温泉は28軒。
温泉法に記された9つの泉質のうち、なんと6つが高知県内でわいている。
放射能泉は細胞を活性化させ元気にしてくれるし、硫黄泉は肌をしっとりとさせる。
重曹成分が含まれた炭酸水素塩泉は角質を溶かす。
塩化物泉は保湿効果がある。
順番は問わないが、泉質の違う温泉をめぐり、現代の渡り湯治を楽しむのはどうだろう。
歩き遍路で巡るのもわるくない。
「高知県といえば、温泉!」と言われる日もいずれ来ることだろう。
旅館業を知りつくした「観光地再生」の仕掛け人
井門 隆夫(イカド タカオ)
マーケティングプランナー / 東京都
株式会社井門観光研究所 代表取締役